届かなかったら、どうする
前回投稿ではラバーマットと同時に納品したケトルベルが破損し、経営者として初めて窮地に立たされたエピソードを紹介した。今回は同じお客様への2回目の納品で起きたこと。
4月24日はスキーマシンとローイングマシンを届けなければならないX DAYだった。理由は、このお取引きを開始したときに「25日、26日に開催される地元イベントで出店する計画がある」ことを告げられていたから。
海上輸送には20〜30日間かかる。コンテナの積荷の順番や税関の手続きによって輸送期間は十分にマージンをみておく必要がある。Amazonのように今日注文して明日届く物流システムや、時刻表通りにくる日本の電車のような利便性や確度を求めてはいけない世界だ。そのため製品が完成した直後、3月23日に出荷した。しかし発送して20日経過しても届く気配がない。
そこで、24日に届かないことを想定して動いた。Amazonで出品されている中国のショップアカウントのローイングマシンをポチったのだ。商品仕様はFRNZの商品と同等。少々高額だったが、リスクをとったポチりだ。Amazonでの予定到着日は1週間後だったが、ポチった3日後、配送元都合でキャンセルの通知がきた。
出品はされていたが、在庫がなかったのだろう。「中国あるある」である。
「まずい。」そう思った私の指は、即座に別のAmazonショップアカウントのローイングマシンをポチっていた。
「○日到着」と配送状況を知らせるメッセージ。こちらのショップのローイングマシンは順調だった。
そしてついに、自宅に大きな段ボールが届いた。24日は最悪のケースとしてこのローイングマシンと既に自宅にあるスキーマシンを車に積んで持っていけばいい。そう安堵し、ワクワクしながら段ボールを開けた途端。
「ん?」
ブラックを注文したのに、ホワイトが届いた
ブラックを注文したはずが、なぜかホワイトが届いた。今回2回目の「中国あるある」。
返品しても、別のショップから買い直しても、24日には絶対に間に合わない。ここは自宅ショールーム用と割り切って、ホワイトを受け入れた。
と同時に、私が注文したローイングマシンが黒であることを中国工場に再確認し、写真送付を依頼した。
ただ、この体験で改めて気づいたことがある。ローイングマシンのような大きな商品に不具合があった場合、どうやって返品するのか。どこに連絡するのか。家電量販店なら店頭に持っていけばいい。しかしECサイト、しかも中国ショップから購入したものとなると、返品の窓口も、言葉が通じるかどうかも不安だ。これで泣き寝入りする人は必ずいる。
この体験が、買い手が困らないサポートをすることをポリシーにしようと考えた原点のひとつになった。
私が注文したローイングマシンを積んだコンテナは無事に23日に日本へ到着した。リスクヘッジだったホワイトのローイングマシンは、留守番することが決定した。

X DAY
X DAYは4月24日。
当日のミッションは、スキーマシン2台・ローイングマシン2台、そして1台130kgのトレッドミル2台をお客様のジムに届けること。前回と同じく、数名の屈強な男たちが総出でトラックから荷下ろしして、1Fから3Fに運び上げるために時間指定で集結していただく必要があった。
ただでさえシビアでタイトな納品ミッション。そこにゴールデンウィーク直前という時期が重なり、事態をさらに複雑にした。大阪の倉庫からジムへ配送する肝心のトラックが見つからないのである。このままだと到着時刻どころか到着日すら読めない。
複数の配送業者に当たり、多くの人を巻き込んだ。それでも前日23日の夜まで決まらなかった。ようやく知り合いの社長に頼み込み、そのご友人のドライバーに繋いでいただくことで、配送手配が整った。まさに綱渡りに次ぐ綱渡り。
そして寝不足の中、4月24日早朝、私も始発で納品先のジムへと動いていた。
中国の春節、国慶節、日本の長期連休は本当に注意が必要だ。気合いだけでは動かない。事前のネゴシエーションも通用しない。この時期のピンポイント配送は、そもそも避けるべきだった。
とはいえ、断れない状況というのも、ある。あらゆる手段を模索して、それでもできなければ仕方ない。だけど諦めるに値する行動ができたかどうか、その真価を問うのは自分自身である。
サラリーマン時代は会社の看板があった。多少の無理も、中国企業間では訊いてもらえた。「なんとかなりません?」とメールや口頭で軽く頼んでいた自分が、まさかこんな洗礼を受けるとは思っていなかった。
だけど、行動すれば道は開ける。コンフォートゾーンを抜けた先に、そんな強さを見つけた自分がいた。
24日朝、ジムの前にトラックが到着し、荷下ろし、ジムへの搬入、そして組み立て。ローイングマシンは黒だった。
順調に組み上がっていくマシンの数々、2台目のローイングマシンを組み立てようとしたとき。
「ん?」

箱を開けたら、ネジがなかった
ネジが無い。「中国あるある」である。
1本足りないのではない。ネジのパッケージごと、見当たらなかった。

困った。咄嗟に他の3台の予備ネジが余っていたことを思い出し、そこから流用して組み立てを進めた。しかしどうしても長いネジが2本足りない。後日、オーナー様がホームセンターで調達してくださり、なんとか完成した。
モヤモヤは残ったが、25・26日のイベント出店の準備は整った。
仕組みに落とし込む
ネジが足りないなんて事態は、おそらく今後もかなりの確率で起こりうるだろう。
これをいかに仕組みで防ぐか。
中国語版マニュアルに差し替えて日本語版マニュアルを入れる小袋にネジも封入する手順を教育する。梱包時の写真を送ってもらう。緩衝材の発泡スチロールにネジパッケージ専用のポケットをつくり、そこに収納させる。
アイデアはいくらでも出てくる。サラリーマン時代に積み上げてきた「改善」や「ロバスト設計」の経験が、ここで生きる。問題は、それを中国の工場側に定着させることだ。これが今後の課題だと、この日に刻んだ。
しかし中国では、ネジがない程度は序の口だ。パーツそのものがない。穴が開いていない。ひどく傷がついている。日本品質に囲まれて育った我々には想像しがたいことが、星の数ほど起きる。仕組みやお金では解決できないことに向き合うことが多すぎる。そんな時に糸口になるのは、やはり人と人のコミュニケーションであり、関係性だ。私はそこを大事にしてきた。FRNZも、人と人の繋がりを大事にしていく。
イベントで、涙腺が崩壊した
なんとか2回目の納入ミッションが完了し、私もイベントに参加した。
お客様の笑顔を見て、チカラになれればそれでいい。盛り上がればそれでいい。そんな気持ちだった。
しかしオーナーさまは、さまざまな事業を経験してきた方で、中国物販と配送の大変さを、言葉の端々から察してくださっていた。「大変だったでしょう」とひと言いただいた瞬間、なぜか涙が溢れた。
この2ヶ月は、本当に孤独だった。
中国人スタッフにも、多くの社長にも頼り、お世話になった。それでも、他責にできない悩みをいつも1人で抱えていた。納入の半分が終わって安堵したわけでもなかった。ただ、堪えきれなかった。かっこつけ続けることができなかった。52歳の男が、恥ずかしげもなく涙してしまった。もしいい加減な仕事をしてきたならば、涙は出なかっただろう。
だけど、救われた。
このようなお客様が最初のお客様で、私は本当に幸運だった。
イベントを後にして、自宅の千葉に帰るとショールームでは、出番を逸したホワイトのローイングマシンが他の機材に馴染んでいた。まるでトイストーリーのように、私が不在の時にスキーマシンやファンバイクたちと会話して仲良くなったかのように、ずっとそこにあったかのような佇まいで置いてあった。今では希少性のある白としてとても気に入っている。ショールームに来てくださるお客様も違和感なく触っている。
純粋にHYROXに挑むチャレンジャーにとって、ブランドや色は重要ではない。
全ての体験が、実利を追求しているFRNZが成長するために必要なプロセスであるかのように思える。

初めてのお客様のエピソード、続きます。
FRNZ-Fitnessでは、稲毛のショールームで実際に機材を体験していただけます。
鍛錬は本物。投資は1/3。
確信は、触れた瞬間に生まれる。
FRNZ-Fitness(フレンズ): Functional Rise & Nurture Zone
代表 田口 求弓|千葉県千葉市稲毛区


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