スパルタンレース、5度目のBeast

——前夜はいつも、ドキドキしている。

前夜はいつもドキドキしている。

完走できるか。足は攣らないで走り切れるか。そして、スピアスロー(槍投げ)は当たるか——。

スパルタンレースには、槍を的に投げるオブスタクルがある。外れると30バーピーのペナルティ。これが毎回、プレッシャーをかけてくる。


目次

変わらない朝のルーティン

スパルタンレースの朝ごはんは、参鶏湯(サムゲタン)と決めている。SPRINT(5km)も、SUPER(10km)も、Beast(21km)も、どのレースも同じだ。

もち米と手羽元、生姜、ナツメ、舞茸——高麗人参の代わりにゴボウと人参を入れる、私流のアレンジだ。電気圧力鍋で仕上げると、軟骨もコリコリ柔らかく、骨の旨みがスープ全体に溶け出す。

これがうまいんだ。

体の芯から温まる。消化にも優しい。そして何より、この味を口にした瞬間に、スイッチが入る。「ああ、スパルタンレースだな」と。

そしてレース直前は、ブロッコリースープ。会場でも同じように体を温めて、スタートに備える。

これはいつ定番化したのだろう。「さあ、作るぞ!」と決めたわけではない。作ったものがたまたまうまくて、次回もこれにしよう——それだけだった。2回、3回と続いたら、もう当たり前になっていた。

喜んで食べてくれる仲間がいたことも、もちろんきっかけになった。何も言わなくても作る。何も言わなくても食べる。それがいつの間にか、この日の儀式になった。

スパルタンレースと、参鶏湯と、ブロッコリースープ。
この黄金律が、最高なのだ。


準備はいつも、レースをイメージしながら

前日の夜はテーピングを巻きながら、コースを頭の中で走る。あの急斜面をどう下りるか。バーピーをどこで挟むか。足が攣りかけたとき、どう誤魔化すか。

マグネシウムオイルをたっぷり塗って、ふくらはぎ、膝、足首——毎年同じ場所を同じように仕上げる。これだけで少し、気持ちが落ち着く。


4年間の記録

2022年、1回目はオープンカテゴリーで仲間と参加した。後半は時間切れで足切り下山したが、なんとかメダルを手にした。

2023年、2回目からエイジグループにカテゴリーを上げた。雨の中、足切りを免れながら6時間超で完走。あのときの泥と冷たさは、今でも体が覚えている。

2024年、3回目は炎天下、5時間台で完走。

2025年、4回目の昨年は強風の中、4時間台でゴールした。

雨、炎天下、強風——これだけ乗り越えてしまうと、日常のそんじょそこいらの苦難は、もう苦難に見えなくなる。これがスパルタンの不思議なところだ。


私の大敵は、天気ではない。

毎回思うことがある。天候より、自分の体の問題のほうが手強い。

私の大敵は、足攣りだ。

水分不足、ミネラル不足——原因はいくつも言われている。マグネシウム、塩熱サプリ、芍薬甘草湯。それでも、攣るときは攣る。

「対策してもどうせ攣るなら、やらなくてもいいじゃないか」——そう思うこともある。だけど考え方を変えると、対策したからこそ、このレベルの足攣りで済んでいる、とも言える。そう思うと、やめられない。

費用対効果の切り分けができない広告を打ち続けるようなものだ。何が効いているのか、どれを切り捨てるか、わからない。だから全部やる。やれることを全部やって、山に入る。

最近、ようやく気づいたことがある。基本的な歩き方、走り方ができていないのではないか。理想的な体の動かし方が身についていない、ということではないか。

クセというのは恐ろしい。意識しながら走っていても、気づけば元に戻っている。

ストレッチ、ピラティス、フォーム走行。できることはたくさんある。問題は、最優先して時間を確保してきたか、だ。

明日は、1年間意識してきたことの答え合わせだ。

今年の会場は、例年のガーラ湯沢から妙高ロッテスキーリゾートへ。新しいコース、新しい山。それでもやることは変わらない。


今回のレースに背負ってきたもの

私にとってスパルタンレースは、趣味でも道楽でもない。好き好んでこんなに辛く厳しいレースに出ているのではない。

挑戦なのだ。自分との戦いなのだ。
コンフォートゾーンを抜けるためのステップなのだ。

そしてレースはいつも、何かの気づきをくれる。新たな目標も見つかる。今回のエントリーは、次の目標探しでもある。

正直に書く。FRNZとは別の事業がうまくいっていない。負債も抱えている。精神的には、この数年で一番のボトムラインにいる。

それでも、下を向いてはいられない。

苦難は、超えられる人にしか訪れない。

誰かを励ます時に、何度も言ってきた言葉だ。今は、自分に向けて言っている。

行動することで開ける未来を信じている。だから今回も締め切りギリギリでエントリーした。レースに出ている場合じゃないだろ!と自分に言い聞かせていたが、それでも逃げたくなかった。

明日は、背負ったものがいつもとは違う。でも、とにかく走り切るしかない。そう自分に言い聞かせることが、前を向く唯一の方法だ。

レースに限らず、もがき苦しみながら進んでいる人たちがいる。明日のコースにも、きっとそうだろう。みんな何かを背負って、山を走る。

いつまでも、自分の可能性を信じる。

参鶏湯を食べて、ブロッコリースープを飲んで、山へ向かう。

明日の朝、会場はきっと寒いだろう。だけどあのBGMが聞こえて、多くのレーサーが集う場に入り、あのMCの声を聞いた瞬間——戦う前の戦士と化す。毎回そうなる。

今年は一番体重を絞った。去年から3キロは軽い、62キロ。

さて、明日は何が見つかるか。楽しみでしょうがない。

行ってきます。AROO!


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