スパルタンレース2026BEAST完走そして5度めのトライフェクタ達成

——妙高の山で、見つけたもの。

完走した。

スパルタンレース2026 BEAST新潟大会。今年から例年のガーラ湯沢を離れ、妙高ロッテアライスキーリゾートへ舞台を変えての開催。私にとっては5度目のBEAST、5度目のトライフェクタだ。


目次

スパルタンレースとは、何か。

「スパルタンレースって何?」と聞かれたとき、私はソラで言えるくらい同じことを答える。

「山や平地、時には砂浜を走りながら、途中に現れる障害物(オブスタクル)をクリアしていく、世界一過酷な障害物レース。

障害物は、高い壁を越える、重いものを担いで運ぶ、ロープを登る、雲梯を渡る、有刺鉄線の下を進む、重いものを引っ張る、そして槍を的に投げる——クリアできなかったらバーピージャンプ30回か、追加のランニングが課せられる。そんな障害物が、5kmコースで20箇所、10kmで25箇所、21kmで30箇所ある。

21kmはスキー場の麓から山頂に向けて走るところから始まる。

頭はドSで体はドM、まさに変態の、変態による、変態のためのレースです。」

そう説明を終えると、8割の方はこう聞き返してくる。

「SASUKEみたいなやつ?」

本質は全く別物だが、半分面倒くさいので「そんな感じです」で閉める。

どんなコースを走るのか。

日本では主にSPRINT・SUPER・BEASTの3つの距離の大会が開催される。

SPRINT 距離5km / オブスタ20箇所 初参加におすすめ

SUPER  距離10km / オブスタ25箇所 スピードと持久力の両方が必要

BEAST  距離21km / オブスタ30箇所 フルマラソン級の本格レース← 今回はこれに出場

これに加え、

STADION 距離5km / オブスタ20箇所 スタジアム内の都市型レース

KIDS   年齢別の短距離 4〜14歳対象

各々が目標をもって挑戦できるものを選択し、トレーニングに励む。

このほか、海外では約50km・オブスタ60箇所のULTRAや、チームで何時間も山の中で課題をこなし続けるHurricane Heatなど、さらに過酷な大会も開催されている。

もちろん、スパルタンレースは競技であるのだから、順位や高タイムを競い合ってこそのイベントである。
しかし皆がそうではない。自分の過去の記録を塗り替えることでもいい。
歩ききってゴールしたっていいし、どれだけペナルティをこなしてもいい。
新しいことや過酷なことに挑戦することや思いっきり楽しむことだって、立派な参加意義である。
ただ、そんな気持ちで始めたスパルタンレースでも、一度完走してしまうと、次はもっとトレーニングして真剣に挑戦しよう、という想いに繋がってしまう。そんな沼のような性質を持ったレースである。

そして、年間でSPRINT・SUPER・BEASTの3種類をすべて完走すると「トライフェクタ(Trifecta)」と呼ばれる特別なメダルが与えられる。私の今回の目標は、これだ。とにかく完走する。


誰が走るのか。

同じレースでも、参加部門によって走り方が変わる。

Elite——賞金や上位大会を目指す最高競技レベル。最も早い時間にスタートし、公式審判員が厳しくジャッジする。

Age Group——年代別に順位を競う競技部門。常にひとりで走り抜く。

16–29

30–39

40–49

50+ ← 10月で53歳になる私はここ。今回は70代の先輩レーサーも参加されていた。

Open——順位より完走を楽しむ初心者向けで、チームで助け合いながらゴールを目指す。


前人未到のコース。

今回は誰もが初めて走る、前人未到のコース。

去年までのガーラ湯沢を想定すると——冒頭からいきなりの激坂で始まり、上の方でさらに急な坂を登っては下りるを永遠に繰り返す。その間に傾斜を利用した厳しいオブスタが現れ、さらに雨や酷暑、強風が拍車をかけ、足攣りが追い打ちをかける。そんなイメージでスタートラインに立った。

さて、妙高ロッテアライリゾートはどうだったか。

ガーラの激坂と違い、やや緩い。しかし、とにかく長い坂道を永遠と登る序盤戦。
そしてここでの一番の敵は——太陽だった。木陰がほぼゼロ。


今回の私を救ったもの。

私は持ってきていた冷感タオルを給水所の水で濡らし、ババっババっと水分を飛ばしてから頭にかぶり、バンダナで固定して走ることにした。

多分、これが今回の私を救った髪アイテム、いや、神アイテムだ。

風やランニングで揺れるたびに冷たいタオルがひんやりと顔を優しく撫でてくれる。日差しも防いでくれる。おそらくは砂漠をさまよう行商人のような見た目であろうが、私はビジュ担当ではない。暑さから体を守ることを最優先に割り切った。全ての給水所でもらう500mlの水——半分は口の中へ流し込み、半分はタオルを濡らした。

一昨年の酷暑。DNF(Do Not Finish)が大勢出たあのレースで、太陽が容赦なく体力を奪い、水分を奪うことを身をもって知っていた。だからこそ今回は早く対処できた。どんな風貌だったのか、スパルタンレース公式のPhotoの公開される日が待ち遠しい。

そして私を救ったのはアイテムだけではない。レースの途中すれ違う、SNSで繋がっているレーサーの皆さまや救護班、いつもボランティアやレフェリーでお世話になっているSRJ(Spartan Race Japan)や他の顔見知りのスタッフの皆さまからの応援がそうである。

そして忘れてはいけないのは、妙高高原から眺める快晴と綺麗な畑が広がる原風景。写真を撮るより、目に焼き付けたかった。本当にいい眺めだった。澄んだ空気がときどき風となって癒してくれる。小さなせせらぎの音も聞こえた。五感が研ぎ澄まされたようだった。

何もかもが私を救ってくれていた。


10km超えても、足が攣らない。

距離を重ね、障害物をクリアし、10kmを超えても足攣りの気配は微塵も感じない。

それでも油断はしない。途中でしっかり止まってストレッチし、マグネシウムなど電解質の補給を怠らない。後半の長い長い下りでも、いつもなら大腿四頭筋が悲鳴を上げているが、今回はまるで違った。

下り坂を走っていると左レーンを後続のOpenカテゴリーのレーサーたちが登ってくる。私は誰とも知らない一人ひとりに声援を送った。

「頑張っていきまっしょー!」「暑さに負けるなー!」「ナイスラーン!」「楽しんで行きましょー!」「AROO!!」

私一人が鼓舞すると、大勢が反応して応援を返してくれる。無視する人は誰ひとりいない。おそらくは疲弊しきっていても、声をだして返してくれる。このお互いの応援パワーが、数キロにわたる過酷な辛さを頭から吹き飛ばし、ふわふわとスキップさながらに軽いステップで下ることができた。これがまさにアドレナリンの力なのだろう。過酷なレースを共有している知らない人たちとの心の繋がりが、一人じゃないことを思い出させてくれる。これがスパルタンレースの醍醐味でもある、と私は常々思っている。

そして「おまじない」的なルーティンや「お守り」的な携帯アイテムについても触れておこう。
前夜に貼ったテーピング、足全体をマッサージしながら擦り込んだマグネシウムローション、2RUNタブレット、芍薬甘草湯、塩飴、パワージェル、ハイドレーション——今回は全てがうまく機能していたと感じた。母指球、小指球、踵からの反発を推進力に変える足運びにも注意を払い、オブスタでも無理な体勢を避けた。教えてもらったこと、学んだこと、できることはなんでもコース内で実践した。


18km地点。予想外の足攣り。

足も攣らず、いい調子でもうすぐゴールという18km地点。ついに野獣(BEAST)が牙を剥き始めた。

「プレートドラッグ」——8メートルくらい先にある50kgの重りを積んだソリがつながったロープを手前に引っ張り、その後、ソリの反対側につながった鎖の取っ手を持って8メートル先のスタート地点に戻す。全身を使う得意なオブスタだが、ロープを持って足で踏ん張ろうとしたその瞬間。

「ピキーン!」

予想外の足攣りの気配が左カーフに襲ってきた。

だが、まだ軽微なレベルだ。足をハの字に構えて座り込み、腕と背中だけでロープを引っ張りきった。這ってソリの反対側側に座り、同じく鎖の取っ手を腕と背中だけで引く。ケツを後ろに下げながらまた鎖を引く——この地道な繰り返しで、ついに8メートルを引ききった。

そしてここでピットインしようと判断した。まだ壊れていない足を十分に休めよう。

約5分のピットイン。
しかしこの5分を削ってしまうと、残り3kmで取り返しのつかない足攣りが来ることは想定内だ。5分を有効活用する。焦らずゆっくりとストレッチと深呼吸、給水、塩分とカロリーの補給、2RUN投入、ロキソニン服用。そして今回初めて使った、ローヤルゼリー入りのちょっと高額だったハチミツ。このハチミツが残り3kmを導いてくれたのかもしれない。

5分のピットインで、立って歩けるくらいまで回復した。足攣りは軽くなった。

例年は、カーフも、スネも、大腿四頭筋も、ハムストリングスも——肢体全体が使い物にならなくなり、まるで「奇行種」のような歩き方になっていた。しかし今回は最後まで、力強い「進撃」を続けられそうだ。

「よし、行こう」


スピアスロー、的中。

そして——スピアスロー(槍投げ)が久しぶりに的中。

5年前のSPRINT初出場でまぐれ当たりして以来だから15レースぶりだろうか?今回はエリートレーサーのSNSでレクチャー動画を見て、それに倣って投げてみた。

よっしゃ〜!うお〜!

全身で喜ぶ余力はなかったが、心の中で叫んで、そのままゴールへ向かった。残り900Mの看板が目に入り、3時間48分台、これは4時間を切れるかもしれない。ここでさらにアドレナリンが全身の苦痛を忘れさせてくれた。

写真撮影がある。ゴール前に神アイテムである冷感タオルを取り、今までで一番元気なBEASTでのファイヤージャンプでゴール。

タイム:3時間57分24秒。昨年より1時間早かった。

そして、トライフェクタ、達成。


結果は、上々手前の、まあまあ超え といったところ。52歳のオッサンだけど若者に混じって頑張った方かな。

道が、見えた気がした。

後で知ったが、今回のコースでエリート1位は1時間50分を切る記録だったという。去年までは2時間半とされていたから、全体的にスピードレースだったのだろう。

それでも、私自身もBEASTの自己記録を大きく塗り替えて4時間を切れたことはこの上ない励みになった。

足攣りは完全には克服できなかった。でも、去年のBEASTとは明らかに違った。ピラティス、シューズ選び、ランニングフォームへの意識。トレーニング回数は少なかったけれど、なんとなく、道が見えた気がした。たまたまコースが合っていただけかもしれない。ガーラ湯沢だったら、きっとひどい足攣りに襲われていたかもしれない。
だけど、今年のBEASTは今までとは違う経験ができた。それが、自信になった。

BEASTをクリアすると、これから1年間の苦難を苦難と思えない強さを手にする。
過去も、そうやって乗り越えてきた。

実はFRNZとは別の事業で、私は多くの負債を抱えることになる。

とある先輩経営者の方から「事業経営者として、引き出しが増える」という温かい言葉を頂いた。それでも、押しつぶされそうな気持ちは消し去れないでいる。またサラリーマンとして、1から——いや、超マイナスからスタートを切るかもしれない。

一時は”BEASTなんて出ている場合じゃない”と出場を諦めていたけど、それでも時間と費用をかけてこのBEAST出場を、5度めのトライフェクタ挑戦を決意してよかったと思える1年を、生き抜いていく。生き恥を晒すかもしれない。人に迷惑をかけてしまうかもしれない。だけど、諦め切れないものを持ち続ける強さを、忘れたくない。そして必ず復活し、この素晴らしいレースを本気で楽しめる自信を身につけていくことをFRNZのブログの読者の皆様さま、お客さま、仲間たちに約束する。

私に何か協力できる仕事がございましたら、是非ご用命いただければと思います。

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確信は、触れた瞬間に生まれる。

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