どこまでも走れる、あの感覚の正体。

——ホルモンが、体と心を動かしていた。

↩ 過去記事:「オンとオフを制する者が、コンディションを制する。」(自律神経)

今回は生活リズムアドバイザーとして、体の機能に深く関係するホルモンについてわかりやすく紹介していこう。
そして最後に、ホルモンと深く関係する、ある驚くべき研究について私の持論を語りたいと思う。

レース中に、突然おとずれることがある。

耐える、我慢する、あと何キロある——そういう言葉が頭を支配しなくなる瞬間。代わりに訪れるのは、とにかく気持ちいい、ぐんぐんイケる、足攣りの気配すらない、どこかに見守られているような——そんな不思議で最強な感覚だ。どこまでも走り続けられる錯覚。

あの体感は、いったいなんなのか。

過去に自律神経の話をした。交感神経と副交感神経が体のスイッチを握っているという話だ。
実はそこに、もう一人の共演者がいる。ホルモンだ。


目次

ホルモンとは何か。

体には、目に見えない司令塔がある。
血液の中を漂いながら、全身の臓器や細胞に「ちゃんと働け」と指示を出し続けている——それがホルモン。
名前の由来はギリシャ語の「hormaein(刺激する・動かす)」。
ちなみに焼肉のホルモンは関西弁の「放るもん(不要なもの)」でありまったく別物だ。

ホルモンが作られる場所は脳の松果体・下垂体にはじまり、甲状腺、副腎、膵臓、卵巣・精巣と、全身に分散している。自律神経がリアルタイムの「電気信号」なら、ホルモンはじっくり効く「手紙」のようなもの——少し遅れて届き、長く効く。

現在、体内で見つかっているホルモンは100種類以上。今回紹介するのはそのごくごく一部。そして驚くのはその量で、例えば女性ホルモン(エストロゲン)は一生のうちに作られる総量がティースプーン1杯程度といわれている。
アドレナリンが分泌する!なんて聞くと、脳から全身にドバドバと出るイメージを持つかもしれないが、実はほんのちょびっとが体の機能に影響しているのだ。

多すぎても少なすぎても問題が起きる。インスリンが不足すれば糖尿病に、甲状腺ホルモンが多すぎればバセドウ病になる。ホルモンは必要な時期に必要な量が分泌されてこそ、体のバランスを保てる。

自律神経とホルモンは、二人三脚で体を動かしている。


体験で知った、ホルモンの存在。

「アドレナリンよ、出てくれ——」レース中に祈ることがある。でも、そんなに簡単には出てこない。
どちらかというと、調子よく足が前に出ているとき、上位にいることがわかったとき、はるか前に追いつきたい人を見つけたとき、沿道の応援を耳にしたとき——そういう瞬間に突然、痛みや疲労が消えて、どこまでも走り続けられそうな高揚感が降ってくる。耐えている感覚が、いつのまにかなくなっている。足が攣る気配すらない。とにかく気持ちいい。あの最強な感覚は、アドレナリンのおかげなのだろうか。

テストステロンは、ジムに行く前後で如実に感じる。行く気がなくても、とりあえず行って、ストレッチ、ウォーミングアップし、パワーラックの前に立つとスイッチが入る。今日は控えめに、と決めていったのに、気がついたら高重量・高レップに追い込んでいる自分がいる。

瞑想中に、いつもの15分が30分にも60分にも思えるようなゆったりした集中が訪れることがある。膝の上に置いた手の感覚すら忘れてしまう無の境地——あれはアセチルコリンの影響なのだろうか。

レース後の筋肉痛を和らげているのはエストロゲンの炎症抑制機能かもしれない。温泉でリラックスし、血流が促進されることで、緊張した筋肉がほぐれていく感覚。あれも、ホルモンが働いている。

これらをまとめると、こういうことになる。

アドレナリン

交感神経の増幅装置
興奮・緊張時に分泌。心拍を上げ、筋肉にエネルギーを送り込む。

テストステロン

筋肉とやる気の燃料
男女ともに分泌。筋肉・代謝を促進し、挑戦意欲を引き出す。トレーニングで増える。

アセチルコリン

副交感神経の促進役
心拍を落ち着かせ、回復・睡眠を促す。深呼吸でこちら側に切り替わる。

エストロゲン

炎症を抑えるバランサー
女性ホルモンとして知られるが炎症抑制・免疫活性化の役割も。男性にも存在する。

ちなみに、長距離レース中にトイレに行きたくなりにくい、と感じたことはないだろうか。大量の汗で脱水気味になると、体は水分を逃さないよう尿量を減らす——それが抗利尿ホルモンの仕事だ。ホルモンは、こんなところでも地味に働いている。


走った後に訪れる、あの「また来たい」感。

朝に走るのは、単なる習慣だと思っていた。でも、日光を浴びながら走ることでセロトニンが分泌され、体内時計がリセットされ、夜にはメラトニンに変換されて眠りを誘う——そういう仕組みを知ったとき、自分が意図せずホルモンをコントロールしていたことに気づいた。

スパルタンレースのペナルティバーピーをクリアするたびに、なぜか清々しい気分になる。あれはドーパミンだったか。ゴールを切ったときの「やった!」という感覚も同じだ。大きな達成じゃなくていい、小さなクリアでも出てくる。だから人はまた走りに行く。

仲間と走ると、ひとりで走るより気持ちいい。ハイタッチをする、レース後に語り合う——あの「つながり」の感覚がオキシトシンを分泌させ、免疫力まで上げているというから面白い。名古屋大学の研究では、オキシトシンが褐色脂肪組織を活性化して脂肪燃焼を促進するとも言われている。

褐色脂肪というのは、エネルギーを蓄えるのではなく燃やして熱を作る脂肪のことだ。運動後に体がポカポカするのは、これが働いているからでもある。

セロトニンにはもうひとつ驚く事実がある。その約90%は脳ではなく腸で作られている。腸内環境が乱れると、気持ちも乱れる。「腸は第二の脳」と言われるのは、こういうことだ。

仲間と走ることには、孤独なトレーニングにはない効果がある。


結局、何をすればいいか。

難しいことは何もない。

  • 朝、外に出て日光を浴びる。セロトニンが動き出し、夜の眠りまでつながる。
  • 小さな目標を決めて、クリアする。ドーパミンの積み重ねが習慣になる。
  • 仲間と走る、仲間と笑う。オキシトシンはひとりでは出にくい。
  • 発酵食品・野菜を摂る。腸内環境がセロトニンの土台になる。

体を動かすと、ホルモンが動く。ホルモンが動くと、気分が変わる。気分が変わると、また動きたくなる。

「また走りたい」という感覚は、依存ではなく、ホルモンが作る正しい循環だ。

体を動かすことは、最も手軽なホルモン調整法だ。


驚くべきニュースと、私の持論。

最近、こんな研究が発表された。
うつ病の原因は「心のありよう」や「過度なストレス」ではなく、体内に潜伏しているウイルス——ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が持つ「SITH-1遺伝子」が脳内炎症を引き起こすことで発症する、というものだ。東京慈恵会医科大学の研究グループによるもので、うつ病患者の約80%がこの影響を受けており、SITH-1を持つ人はうつ病になりやすさが12倍になるという。

もしこれが本当なら、「うつ病は心の弱さ」「ストレス耐性の問題」という長年の見方は根本から変わる。診断は血液検査に、治療は抗うつ薬から脳内炎症を標的にした薬へ——心療内科のあり方そのものが変わっていく可能性がある。このニュースは、終わりの見えないカウンセリングや安定剤に依存する時代が終わる可能性を感じた。

私はうつにかかった経験はない。ただ持論として、何かの目標や目的が持てるような何か、あるいは誰かと出会い、自分が変わりたいという強い気持ちを持ち、動かない身体を積極的に動かし、自分の殻を脱ぎ去り、高い壁を越える強さを身につけないと永遠に変われないと考えている。「今日も体調が悪い」と悩むのではなく、「どうしたら体調が良くなるか」を考える。悩むことと考えることは違う。他責ではなく自責思考へのスイッチも必要だ。

「軽い運動から始めればいい」「規則正しい生活をすればいい」と言っても、それすらできないほど気持ちが落ちてるんだ、と返されてしまう。そうなると、根気強い周囲の寄り添いが必要になってくる。でもそれを最優先にできない人の方が多いだろう。だからこそ、原因そのものを取り除ける治療法の登場は、多くの人にとって希望になりうる。

私は医学の専門家ではない。だから断言はできない。ただ、この研究を読んで直感的に思ったのは、今回取り上げたアセチルコリンをはじめとするホルモンのバランスを整えること——運動、睡眠、深呼吸——が、うつの予防という意味でも無関係ではないかもしれない、ということだ。

目に見えない壁をこえることはむずかしい。だからこそスパルタンレースでリアルに高い壁を、全身を使って乗り越える。「体を動かしていれば、なんとかなる」——これはあくまで私の持論だ。でも、そう信じて走り続けている。

興味があればリンク先をどうぞ:
うつ病は潜伏感染ウイルス遺伝子(SITH-1)による脳内炎症が原因【最新研究】/長谷川メンタルヘルスケアセンター


FRNZ-Fitnessでは、稲毛のショールームで実際に機材を体験していただけます。

AIR SKI / AIR ROWER——
全身を使う有酸素運動で、ホルモンを動かそう。
👉 稲毛ショールームに問い合わせる(LINE)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次